CULTURES’ BackPacker vol.13「音楽稼業七変化〜CHiLi GiRL編〜」

 本連載、新しい一年の幕開けです。先に詫びると、なんだかんだ締め切りぎりぎりになってしまうのをいつも申し訳なく思っている上、JUNGLE★LIFE編集の皆様には、いつも丁寧に記事を迎えていただき感謝しています。

 そして読者の皆様におかれましても、少しでも記事の内容や運びが成長したなあと感じていただけるように、果敢に多感に、文化間バックパッカーとしての見聞録を更新し続けて参りますので、懲りずにページを開いていただけたら幸いです。

 ”音楽稼業七変化”というシリーズで、プロローグから始まり5回書き連ねてきましたが、七変化と行っておきながら、毎度毎度自分の稼業について「他に、あたしには何があったっけか…」と思い出し振り返りしている状態です。笑

 ディレクション、大会指導、海外公演、民謡演奏家と4つを紹介し、残り3つ。おそらくそれは、CHiLi GiRL、音楽作家、アナライズや開発サポートといったところで収まりが効くのではと、未来の自分のためにここで残りの手札を明かしておくことにします。

 もしこれ以上増えたら、それはそれでお楽しみください!そのくらい音楽家という職業は、柔軟であり、考え方が様々あるのだと自分でも知っておきたいつもりなので。

 

 そんなわけで今回は、CHiLi GiRLという音楽稼業についてです。

 CHiLi GiRLは、あたしには無くてはならない、アーティストとして自分の本質を秘めた顔なのです。

 血潮に流れる民謡人としてのあたしとは違う顔。違うけれど、どちらも本質的なあたしであり、好きなものをたっくさん詰めて表現することができる、絶対的必要不可欠の姿なのです。

 CHiLi GiRLは自由でなければなりません。川嶋志乃舞として生きてきた葛藤から解き放たれた、2023年12月シンガポールでの出来事をきっかけに、さらにその自由さと必要性に拍車がかかった気すらします。

▶︎vol.11 「音楽稼業七変化〜使命感の要らない海外公演編〜」https://www.jungle.ne.jp/serial_post/cultures-backpacker_11/

 

川嶋志乃舞時代から、ルーツカラーが溢れる好きな曲を作り続けているのは変わりません。その証拠に、いまだに19、20歳頃に作った曲をCHiLi GiRLとして演奏しているのですから。ひとつひとつの音楽に心を込めて、長持ちする良い曲を、というのも変わっていないのです。

 でも、川嶋志乃舞には使命感が付きまとうのです。

 vol.11が公開された時、アメリカのファンがXでこのように引用ポストしてくれました。

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 This is not just a travelogue or tour report, but provides some inside-baseball regarding how the shows are organized and the purpose of creating the “CHiLi GiRL” alter-ego.

 I made a joke about how she could be the “shamisen idol” and should just add a lot of shamisen to every pop song, but the reality is some of her performances are as a “cultural ambassador” and they expect traditional songs, so she can’t fit her original songs into the set.

 これは単なる旅行記やツアーレポートではなく、ショーの開催方法や「CHiLi GiRL」の分身制作の目的などについての秘話をまとめています。

 私は、彼女は “三味線アイドル “になれるのだから、すべてのポップソングに三味線をたくさん入れればいいのではと冗談を言ったのですが、現実には、彼女の公演のいくつかは “文化大使 “として伝統的な曲を期待されているので、ポップソング、ましてや彼女らしさのあるオリジナルソングをセットリストに入れることができないようなのです。

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 このポストを受けて、理解してくれるリスナーや読者が世界中にいることを知り、本当に励まされました。だからこそ、CHiLi GiRLは自由で自分らしく、スパイシーでチャーミングでいたいのです。

 

 時々「川嶋志乃舞とCHiLi GiRLはどちらも三味線を弾いていてポップスを作っては演奏しているわけだけど、どのように違うの?」と問われます。

 あたしははっきりと

「川嶋志乃舞は何でもやります。CHiLi GiRLは音楽ジャンルや作品テーマは勿論、三味線を使うかどうかすらも自由に決められる、あたしの音楽人生で不可欠の癒やしどころなのです。少しでも相手からの要望、たとえば民謡や津軽じょんがら節を三味線奏者として求められれば、CHiLi GiRLではなく川嶋志乃舞が動きます。CHiLi GiRLは、誰にも何も言わせない、あたしが我儘してもいい居場所であり、姿なのです。」

と答えます。

 

 加えて、ここ最近はお陰様で新作歌舞伎「流白浪燦星(ルパン3世)」の編曲とレコーディングに携わらせて頂いたこともあり、川嶋志乃舞は伝統芸能ベースのしっかり万屋、CHiLi GiRLはお転婆なチャレンジャーであることを世間にもようやく、これまでよりも明瞭に区分を伝えられるようになりました。

 川嶋志乃舞でも恋に纏わる作品はたくさん書いてきたものの、どこか古の作品や感情とリンクさせなければならない課題があったのです。それが”伝統芸能ポップアーティスト”の条件だったから。

 

 しかし作品は、コンセプトはあれど束縛を設けては絶対にいけないと思うのです。

 あたしはいつしか、伝統芸能ポップというコンセプトを束縛だと感じてしまったのです。

 使命感や束縛の無い自由な音楽制作。憧れてたまらなかったそれをCHiLi GiRLとして体現しています。

 それに嬉しいのが、仲間の顔触れは概ね川嶋志乃舞時代から変わらないのです。

 メンバーは増えはするものの、昔からの盟友であり親友たちは変わらずそばにいてくれていることが誇らしくて、ついつい甘えてしまうことばかり。

 だからこそ、パッと思い付いたアプローチや構成を、にこにこと無遠慮に共有しては一緒に音を鳴らしてもらうというリハーサルやステージ本番が、より楽しくて仕方がないのです。

 音楽を作るコンセプトや歌い方、衣装や客層や共演する界隈がたとえ変わったとしても、音楽に向かう姿勢自体は昔から変わらないからなのでしょうか。

 でもそれは、そばにいてくれる仲間にも同じようにあたしも思うのです。何も変わらない、むしろ丸くなって大人になって、知識も増えて、お酒でヘマをすることがぐんと減ったくらい。笑

 CHiLi GiRLが自由でいられるから、川嶋志乃舞はしっかり万屋でいられるのです。川嶋志乃舞が万屋として頑張るから、CHiLi GiRLはよりクリエイティブでいられるのです。

 頭の中にある音楽や絵や、映像のニュアンスや、セリフや言葉を、思いのままに自分色に表現していいのです。

 

 このサイクルのお陰で伝統芸能ポップを、今は全く束縛だとは思わなくなるほど、CHiLi GiRLは表現のリハビリを助けてくれた、自分自身の中にいるヒロインなのかもしれません。(民謡アレンジや、より日本的アプローチでの作品を作るのも対照的で楽しくなってきたので、川嶋志乃舞としての作品集が出る日も近いかも!)

 そんなお転婆CHiLi GiRLは、来たる3/20に「Secret Secret」をニューリリースします。

 アートワークはお馴染み亀井桃ちゃん。「恋のドキドキとクールを装ってるつもりの、頑張り屋で働き者のシティーガール。ほんでレディースコミック感」というのも、漏れなくバランスよく一枚の絵に書き下ろしてくれました。素晴らしすぎます。現代と90年代がミックスされた、あたしの好み大爆発のアートワークになりました。桃ちゃん、いつもドンピシャをありがとう!

 

 楽曲制作期間を共に過ごしてくれたのは、渡邊シンくん。川嶋志乃舞時代にも「ショコラトーク」「おしゃれなふたり」で編曲に入ってくれており、今作は5年ぶりに編曲をお願いしたものになります。Rec,Mix,Masteringは友重悠くんにお願いしました。良いチームです。

 シンちゃんは、「都会の森」MV撮影監督および1st album「MEBAE」ジャケット撮影、キツネを被り始めた頃のアー写撮影、ファンブックvol.1のポートレート撮影など、実はCHiLi GiRLに携わってくれていました。

 シンちゃんとの制作の日々は本当にノンストレス。あたしたちは昔から変わらずツーカーの仲で、好きなものや見て育ってきたものがドンピシャゆえに、スムーズに曲が完成したのです。

 

 MV撮影もしたのでその公開も間も無く。そしてもうひとつ、まもなく追加で発表する、シンちゃんと作ったもうひとつのビッグニュースも間も無くです。みんな喜んでくれたら嬉しいな。

 

 編曲に携わってくれている友重くんや宮野、ほかfeat.アーティストらは、CHiLi GiRLにおいてスパイシー&チャーミングをバランス良く引き出してくれるのですが、今作はおそらく、チャーミング&キュート、時々サワーといった、そんな作品になった気がします。

 新しい味にまた出会えた予感。どうぞリリースまでお楽しみに。

 中四国ツアーも間も無くです、元気にお会いできたら嬉しいです!

 

2024.3.10

Shinobu Kawashima著

 

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