CULTURES’ BackPacker vol.4「One Q、和洋折衷、時代を超える恋心」

 【和洋折衷】。よく耳にする言葉ですが、日本と西洋との風習・様式を適当に取り混ぜること、という意味があるのだそうです。あたしが三味線や日本文化を取り入れてポップミュージックを制作していく中で、時折そのような感想を預かることもあります。しかし和洋折衷というのは、あくまでそれは日本文化が前にあった状態を指すのだとも思うのです。日本文化をベースに洋文化を取り入れる。それは我が国の文化を大切にしたいというムーブが根底にあるからこそだからか、その様式美を完全にかき消すことなくバランスを保ちながら、新たなスタイルを確立して存在しています。そしてそれは視点を変えてみると、簡単に洋文化から完全に食ってかかられることのない強いパワーを持つ日本文化だからこそ完成するバランスであるとも言えます。

 

 CHiLi GiRLの音楽もとい川嶋志乃舞が持つ三味線の音の置き方は和洋折衷ではなく、あくまで洋文化から強く影響を受け、ろ過され昇華され生まれたジャパニーズ”渋谷系”が根底にある音楽プロジェクトなのですが、5/31にリリースした「One Q feat.倉品翔(GOOD BYE APRIL)」は、これまでの作品のバランス感から原点回帰し、改めて和洋折衷の作品となりました。

 

 歌舞伎でも愛される長唄「二人椀久(ににんわんきゅう)」を題材に制作した今作がなぜそうなったかといえば、実は和洋折衷を重んじつつポップミュージックを表現し続けていた2019年川嶋志乃舞時代の作品だからです。伝統芸能ポップアーティストを名乗る川嶋志乃舞は、何かしら日本に因んだ作品を作り続けていました。例えば長く愛していただいている「遊廓ディスコ」は長唄「吉原雀」を、「トリカブト」は狂言「附子(ぶす)」を、キツネ倶楽部は能楽「殺生石」さらに殺生石から派生して誕生した長唄「那須野」をそれぞれ題材にしています。これらは東京藝術大学に通っていた頃に勉強していた古典邦楽からヒントを得た作品で、そこに恋心や女の生き様を絡めてポップス表現をした曲。今作「One Q」も、CHiLi GiRLが生まれる以前の当時書き下ろしたものになります。

 

◆遊廓ディスコ/川嶋志乃舞

https://youtu.be/CYwql2EUQlk

 

◆トリカブト/川嶋志乃舞

https://music.apple.com/jp/album/%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%AB%E3%83%96%E3%83%88/1437481239?i=1437481392

 

◆キツネ倶楽部/川嶋志乃舞

https://youtu.be/JI10pB7LOTE

 

 さてその頃、あたしは和洋折衷とも長きにわたって闘っていたのも事実です。なぜなら純粋にポップミュージックをしたいのに、日本文化というものはパワーが強すぎるし、さらにはそこに三味線を持って舞台へ出てこようものなら”和”が前に出て当然なのですから。

 

ーーー三味線を持たなくても、日本文化を背負わなくても、あたしはあたしの歌いたいものを歌いたい。

 

 そう強く感じていて、とうとう自分の武器に自分自身が壊されてしまいそうになった頃に「One Q」を作りました。江戸時代の儚い恋心を、時を超えてもきちんと様式美を保ちつつ歌うから、三味線をいよいよ置いてしまおう、と自分を救うために書いたのでした。そのうちにCHiLi GiRLを始めて、この曲を作ることになった苦しみや葛藤をも忘れ自由になったとき、ファンのおひとりが「One Q、また聴きたいな」と言ってくださったのです。

 

 苦しかったことを忘れることで救われていたけれど、その頃作った曲ごと忘れてしまっていたのです。リリースすらしていていなかった幻の曲「One Q」。それを覚えていてくださったその方には本当に感謝しています。ライブで数回しかやったことのなかったこの曲を約3年もの間忘れずにその方の心に刺さっていたこのパワーを信じて制作を決めました。なんなら、もっと良い曲にしようと。そこで頼もしい先輩であり友人の倉品翔くん(GOOD BYE APRIL)にアレンジと共演をお願いして、さらに強く魅力的なパワーを込めて、幻を現実にすることができました。

 

 二人椀久は、遊女の松山太夫に恋をした椀屋の久兵衛が、叶わぬ恋の末ついに気が触れてしまい、夢幻として現れた彼女と桜の木の下で踊るというお話。偶然にも一時的に幻と化していた本曲の経緯とも重なり、自分にとって忘れることのできない一曲となりました。時代によって恋の落ち方、落とし方、そして恋する時間の過ぎ方は変わりますが、恋することそのものはいついかなる時も変わらないのではないでしょうか。和洋折衷に改めて向き合ったことで、そんな大切なことにも気づくことができました。

 

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 昨年「泣き虫の星」でGOOD BYE APRILとして参加させて頂きましたが、今回は僕個人として、歌唱とアレンジ・ミックスをやらせていただきました。

 最初にこの曲のdemoを聴いた時からすごく素敵な曲だなあと思い、「二人椀久」という日本の伝統芸能が題材やモチーフになっているというのが、すごく面白かったですし、”グラウンドビート”が基軸になって、三味線だったりサックスだったり色んな音が絡み合ったアレンジになっているので繰り返し聴いて新しい発見がたくさんできるとかなと思うので、是非じっくり聴いていただければと思います。

倉品翔(GOOD BYE APRIL)

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One Q feat. 倉品翔(GOOD BYE APRIL)はこちらからチェック!

https://clg-tokyo.bitfan.id/contents/102344

 

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2023.6.10掲載

執筆:Shinobu Kawashima

 

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LIVE INFOMATION

6月23日(日)京都MOJO

7月1日(土)渋谷ストリームホール/オノマトペル主催「TOKYO天の川」客演コラボ

7月12日(水)下北沢rpm「Summer Jam Session(川嶋ジャム)」

7月22日(土)CHiLi GiRL&川嶋志乃舞 mixed one-man show「LOVE SPiCE HARVOR」

※来場チケットSOLD OUT/配信チケット発売中

チケット詳細はこちら▷https://clg-tokyo.bitfan.id/schedules/menu/34068

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